クアドラカット法
このような症状のかたへ
- わきのニオイが気になる
- ニオイを人から指摘されたことがある
- わき汗がとても多い
- 腋臭症・多汗症を同時に治したい
- 1回の施術でずっと続く効果持続を得たい
特徴
腋臭症(えきしゅうしょう)とは
一般的には「わきが」と呼ばれ、わきの下の特有の刺激臭を特徴とする疾患です。基本的には症状はニオイだけで、欧米ではある程度生理現象として認識されていますが、日本ではニオイに嫌悪感を抱く傾向があり、治療の対象となります。
思春期からニオイが強くなる場合が多く、最近の研究では、ABCC11という遺伝子が腋臭症や湿性耳垢(湿った耳アカ)に関係しているという報告もありますが、遺伝性がない場合も多く、程度や発症時期にも個人差があります。
ニオイの原因:アポクリン腺
皮膚にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類の汗腺(汗を出す分泌腺)があります。
腋臭の原因となるのはアポクリン腺で、わきの下、まぶたの縁、鼻、外耳道、乳輪、外陰部などの毛穴に分布し、分泌される汗に含まれる脂肪酸などが皮膚表面の細菌の作用で分解されて特有の刺激臭を生むとされています。
いっぽう、エクリン腺は、温度調節のための水分を多く含んだ汗を分泌します。基本的には無臭ですが、服に汗が染み込んで長時間湿った状態になると、雑菌が繁殖して、間接的にニオイの原因になることもあります。ただし、これは自分の体がニオイを発しているわけではないため、服の着替えなどで対処可能なニオイです。
アポクリン腺
- ・まぶたの縁、鼻、外耳道、乳輪、外陰部などに分布している。
- ・特有の刺激臭を持った汗を分泌する。
- ・分泌の量は、アポクリン腺の数や発達の程度によりコントロールされている。
エクリン
- ・全身に分布している。
- ・暑いときや運動をしたときなどに温度調節のために汗を出す。
- ・分泌する汗はほとんどが水分で、ニオイはない。
- ・分泌の量は、自律神経の一種である交感神経によりコントロールされている。
汗の量が非常に多い多汗症
上述のエクリン腺からのさらっとした汗(ほとんどが水分から構成される汗)が異常に多く分泌される状態を「多汗症」と呼びます。暑い時に汗が多く出るのは当然ですが、多汗症では温度や湿度に関係なく、また運動や食事などの汗を出るようなことをしていない時にも大量に汗が出るのが特徴です。
原因は、汗の分泌をコントロールしている交感神経の異常だと考えられています。汗が多く出る部位は、わきの下、手のひら、足の裏、背中など、人によって個人差があります。
多汗症と腋臭症は、原因となる分泌腺はそれぞれ別であり、異なる疾患です。
しかし、ときに両方をあわせもっている場合、つまり、「さらっとした汗の量も多くて困っている」し、「さらっとした汗をかかないときにも刺激臭が強い」という方もいます。
クアドラカット法による治療
軽度の場合は消臭剤で様子を見ることもありますが、ニオイが強い場合には、手術による治療が効果的です。ニオイの強さを検査機器等で測る検査は一般的ではなく、また、ニオイの感じ方も主観的なものなので、症状の強さはご自分での自覚症状に加えて、家族や近い友人などからの問診も参考になります。
手術は、局所麻酔(希望により静脈麻酔を併用)で、わきの片側ずつおこないます。わきの下の皮膚切開から、アポクリン腺を含む皮下組織を除去します。
当院では、手術用シェーバーであるクアドラカットという専用の機器を利用して、組織の除去をおこなっています。
クアドラカットの先端
アポクリン腺は肉眼では見えない顕微鏡レベルの組織であるため、手作業で除去するとどうしても細かい「取り残し」が生じます。また、指や手術用ハサミが入りにくい病変部の周囲近くは、手作業で完全に除去することはできません。
クアドラカットを使用することにより、小さな切開から、取り残しなくキレイにニオイの原因である組織を除去することが可能です。
また、エクリン腺や毛根もほとんど残りなく除去するため、同時に汗の量も減らし、腋毛も永久脱毛する効果があります。
手作業での除去の場合、エクリン腺の数は減っても、残ったエクリン腺の分泌をコントロールする交感神経からの命令が増えてしまうため、さらっとした汗の量はあまり減りません。
クアドラカット法では、わきの下のエクリン腺を、ほぼ根こそぎ除去するので、多汗症に対しても非常に高い効果を発揮します。
術後の注意点
腋臭症の治療で最も注意が必要な合併症は、傷が治るまでの期間にわきの皮膚の下に血の溜まり(血腫)ができ、それらの結果として皮膚が壊死してしまう状況です。その予防のために、術後はガーゼをわきの下に大量に当てて固定します。傷の安静が非常に重要ですから、手術した側と反対の手を使用し、手術側の腕を動かし過ぎないなどの生活上の注意を必ず守っていただく必要があります。
また、手術後、皮膚が引きつれたり(拘縮)、色が黒ずんだり(色素沈着)します。これらは数ヶ月で次第に改善していきます。
「ニオイ」は、人に直接聞いて確かめにくい、デリケートな悩みです。
わきがや多汗症のせいでコミュニケーションがうまくいかなくなったり、自分に自信を持てないのはとても悲しい状況です。
ニオイや汗のコンプレックスから脱却するための治療に、勇気を持って踏み出しましょう。