レーザー
このような症状のかたへ
- 盛り上がって赤いきずあとがある
- きずあとに痛み、かゆみがある
- きずあとが大きくなってきた
- ケロイドの赤みを減らしたい
特徴
ケロイドとは
ケロイドは、きずあとが垂直方向に盛り上がったり、もともとの範囲を超えて水平方向に拡大していく疾患です。通常、ケロイドは赤みを帯び、痛みやかゆみなどの自覚症状を伴います。
ケロイドと非常に似ている疾患として「肥厚性瘢痕」があります。肥厚性瘢痕もきずあとから発生し、赤みを帯びた盛り上がった状態で、いわゆる「ミミズ腫れ」の状態ですが、ケロイドと違い、もともとの範囲を超えて拡大する性質はありません。
ケロイドの発生には体質要因と環境要因の2つが関係していると言われます。
ケロイド体質と呼ばれる体質の方は、小さなきずあと、時にはひっかき傷や虫さされなどからケロイドになることもあり、ケガをした際や手術を受ける際には注意が必要です。ただし、すべての人がケガをすればきずあとになりますから、きずあとが残っているからといってケロイド体質ではありませんので、過度に心配する必要はありません。
人種差も知られており、白人種<黄色人種<黒人種の順にケロイド発生率が高いと言われています。
環境要因は、ケロイドの発生に影響するきずの状況です。例えば、刃物でスパッときれた切り傷より、転倒してぶつけた傷ややけどによる傷のほうが、周囲の細胞の損傷が大きくなります。また、受傷後に感染したり、摩擦の刺激を受けたりすることも、ケロイドの発生率を高めます。
きずにかかる張力(テンション)も、ケロイドの発生に関係します。一般に、きずにかかる力が強い関節部位はケロイドができやすい部位です。
体の特定の部位でも、ケロイドの起こりやすい部位が知られています。前胸部(胸の真ん中)や、恥骨部、背部、耳たぶなどはケロイドが起きやすい部位です。
また、妊娠時期はホルモン環境の変化により、ケロイドになりやすい、あるいはもともとあるケロイドが悪化しやすいことが知られています。
ケロイドの治療
ケロイドは悪性の腫瘍(皮膚癌)ではありませんが、放置するとどんどん拡大していく性質をもっています。
痛み、かゆみや、部位によっては関節の動かしにくさ、そして目立つ外見が自然になくなることはありません。
ケロイドが大きくなってからの治療は、治療が難しくなったり、期間が長くなるため、早めに形成外科専門医を受診することが大切です。
ケロイドは単純に切除すればよいというものではありません。縫合したきずあとから新たにケロイドが発生し、結果として再発してしまう危険性があるからです。
ケロイドには手術による治療と、薬剤治療等の手術以外の治療法があります。
どのような治療をおこなうかは、ケロイドの発生要因である体質要因と環境要因を医学的に分析し、適切に選択する必要があります。また、ほとんどの場合は、複数の治療を組み合わせて治療をおこないます。
また、ケロイドが再発しないように、根気強い治療の継続が必要です。
ケロイドの治療は、医学的な知識と豊富な経験を必要とする高度に専門的な治療ですので、必ず形成外科専門医にご相談ください。
ケロイドの各種の治療法
ケロイドに対する治療法には、さまざまなものがあります。
これらの治療を組み合わせ、また、治療に対する反応性を確認しながら治療をおこないます。
以下に、それぞれの治療法の特徴をご説明します。
ケロイド切除術
ケロイドを切除し、きずにかかる力を抑える縫合テクニックを用いて切除部位を縫合閉鎖します。
部位によっては、きずにかかるテンションを分散するような瘢痕拘縮形成術や、皮弁形成術という手術手技を同時におこなうこともあります。
術後、きずあとが安定するまでの数ヶ月間、医療用のテープできずあとを保護します。
レーザー治療
赤みの強いケロイドに対して、血管を退縮させてケロイドの勢いを抑えます。麻酔クリームを塗布し、色素レーザーを照射します。
ケナコルト注射
ケナコルトは、ステロイドの一種で、ケロイドの勢いを抑える効果があります。麻酔クリームを塗布し、ケロイドに直接、注射をおこないます。
局所への注射であるため、全身への副作用が生じることはほとんどありませんが、女性では時に生理不順になることがあります。
局所への副作用としては、注射部位の組織の萎縮や、毛細血管拡張(皮膚の血管が浮き出て見える)が起きることがあります。
ステロイド外用治療
ステロイドの軟膏を塗布したり、ステロイド含有シールを貼ります。副作用が生じることはほとんどありませんが、ケナコルト注射よりは効果は軽度になります。
内服治療
ケロイドを抑える薬効を持つ内服薬(トラニラスト、製品名:リザベン)を内服します。
手術後の再発予防に使用されることもあります。副作用としては、まれに、出血性膀胱炎が起きる可能性があり、症状としては尿に血液が混じることで気づきます。
また、これに加えて、補助的に漢方薬を内服することもあります。
圧迫療法
ケロイドを圧迫するためにスポンジ貼付や包帯圧迫をおこなう治療です。持続的な圧迫によりケロイドを抑える効果があることが知られています。
シリコンを材料としたシリコンゲルシートを貼ることもあります。シリコンゲルシートは、圧迫以外にも、局所の酸素濃度を下げたり、微量の静電気を帯電することなどにより、ケロイドを抑えるのではないかと推測されています。
電子線治療
放射線の一種である電子線をケロイドに照射する治療です。特定の医療施設で可能な治療です。
電子線は体表ですぐに減衰(効果が衰えること)しますので、ケロイドの組織のみに影響を及ぼすことができます。通常は、手術治療と組み合わせておこなうことが多い治療です。