漢方薬
このような症状のかたへ
- にきびを治したい
- くすぶったりしながらにきびがずっとある
- 皮膚科でもらった抗生剤の軟膏で治らない
- 体質的に炎症肌である
- にきび跡を残したくない
- 自宅で自分でケアしたい
特徴
ニキビ:毛穴の慢性の炎症
思春期に悩む事が多いニキビですが、大人になってからのニキビも増えてきています。ニキビの正式名称は、「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と言い、毛穴におきる慢性の炎症です。
ニキビを治すためにも、また、将来のニキビ跡を予防するためにも、ニキビの原因や、日常生活での注意点、治療法の特徴を理解しておくことは大切です。
ニキビの一般的な原因
ニキビの発生には、いくつかのステップがあります。
最終的に起きる現象は、「毛穴の炎症(毛包炎)」ですが、ひっかいた部分の毛穴が赤くなる単なる毛包炎とことなり、ニキビにはその前のステップ、言わば「黒幕」がいます。
最初のステップは、「ホルモンのアンバランス」です。
男性ホルモン、成長ホルモン、黄体ホルモンなどのホルモン量が増えたり、アンバランスになることが、ニキビ発生の最初の原因になります。女性も男性より少量ですが、男性ホルモンを持っています。思春期や成長期、あるいは生活習慣などによりホルモン量が変化してバランスが乱れます。
次に、これらのホルモンの増加により、「皮脂分泌の増加」が起こります。
皮脂は、保湿成分を含み、皮膚を保護する役割を持っています。毛穴と連続する「皮脂腺」という分泌腺から分泌され、毛穴を通って皮膚へと広がります。皮脂は決して悪者ではありませんが、この量が多すぎると、次のトラブルへとつながります。
皮脂分泌の増加により、「角栓による毛穴のつまり」が起こります。
大量に分泌される皮脂により、毛穴の開口部(皮膚とつながる出口)に栓をされた状態になります。この栓を「角栓」と呼びます。角栓により、毛穴がつまり、出られない皮脂がつまった状態になります。
角栓による毛穴のつまりが続くと、「アクネ菌の増殖」が起こります。
毛穴の中にぎっしりつまった皮脂は、細菌が増殖するためのかっこうのエサになります。ニキビの原因となる細菌は、ほとんどがアクネ菌(Propionibacterium acnes)です。この菌は、いつもは毛穴の中でおとなしくしていて、人とうまく付き合って常に存在している菌(皮膚常在菌)です。また、嫌気性菌と言って、酸素がある環境では増殖できない性質を持っています。ところが、皮脂がつまった毛穴の中は、酸素がなくなってアクネ菌が増殖できる環境になります。
アクネ菌の増殖により、とうとう「毛穴の炎症」が起こり、ニキビが発生してしまうのです。
アクネ菌は、それ自体も炎症の原因となり、また、炎症の原因となる物質も産生します。また、アクネ菌の増殖により毛穴の中の環境が変わり、他の細菌も感染しやすい状態となり、「混合感染」が起こることもあります。
「ホルモンのアンバランス」
↓
「皮脂分泌の増加」
↓
「角栓による毛穴のつまり」
↓
「アクネ菌の増殖」
↓
「毛穴の炎症」(ニキビ発生)
このように、ニキビが発生するまでにはいくつかの段階があります。
最終的に起きたニキビはもちろん治療の必要がありますが、発生する前に食い止める治療も必要です。また、ニキビが起きにくい体内環境を保つ予防も重要になります。
思春期ニキビと大人ニキビ
思春期は、どうしてもホルモン環境が大きく変化する時期です。思春期にできるニキビはどうしてもこの影響を受けざるをえません。
いっぽう、大人になってからもニキビが出ることがあります。「ふきでもの」と呼ばれることもありますが、本質的には同じです。大人の場合、ホルモン環境に影響を与える生活習慣(食事、ストレス、睡眠、スキンケア等)が原因になっている場合が多く見られます。
思春期のニキビにおいても生活習慣を整えることは大切ですが、大人の場合は生活習慣の見直しだけで予防できることもあり、どのような生活習慣がニキビに影響を与えるかを知ることがとても大切です。
生活のなかで注意するべきこと
バランスの良い食事をとりましょう。
ホルモン量や、皮脂の分泌には食事の内容も関わっています。
- ・偏食や、過度のダイエットは避けましょう
- ・偏食やバランスの悪い食事でタンパク質不足にならないように注意しましょう
- ・動物性脂肪を摂りすぎないようにしましょう
- ・必須脂肪酸(オメガ3系脂肪酸)をしっかり摂りましょう
- ・糖質(炭水化物)を摂りすぎないようにしましょう
- ・高GI食(血糖値を急速に上昇させる食べ物)は避けましょう
- ・ビタミン類をしっかり摂りましょう(特にビタミンAやB群は皮脂分泌に強く影響します)
- ・食事はバランス良く、規則正しい時間で摂り、間食をなくしましょう
- ・カフェインなどの嗜好品(コーヒーや紅茶などに含まれます)を摂りすぎないようにしましょ
- ・アルコールを摂りすぎないようにしましょう
現在の食事内容に問題はないのか、また、栄養素やビタミン類などに過剰や不足がないのかをきちんと調べたい方や、どう改善したら良いのか自信がない方は、栄養カウンセリングも受け付けておりますので、気軽にご相談ください。
睡眠をきちんととりましょう
睡眠不足が続くと、肌の機能が低下して、正常な皮膚のターンオーバーができなくなります。また、緊張状態が続いてストレスが増加すると、交感神経が優位になり、男性ホルモンの分泌が増加してニキビに悪影響を及ぼします。
ストレスを避けましょう
ストレスを感じると、体はコルチゾールという抗ストレスホルモンを分泌します。このホルモンは男性ホルモンと類似の作用を持ち、ニキビに悪影響を及ぼします。
紫外線を避けましょう
皮膚は紫外線に当たると、肌のバリア機能が働き角質が厚くなります。また、紫外線によって生じる活性酸素の影響で、ターンオーバーが乱れて、ニキビに悪影響が出ます。
肌の状態にあったスキンケアをしましょう
クレンジングや洗顔で表面の皮脂を取り過ぎると、肌のバリア機能は低下し、刺激から肌を守るために角質が厚くなります。これはニキビ治療にとってはマイナスです。
また、保湿が不十分で角質層の水分が不足すると、ターンオーバーが乱れ、やはり角質が厚くなってしまいます。
除去したいのは毛穴の中の皮脂であり、これはスキンケアだけで取りきれるものではありません。躍起になって、役に立っている表面の皮脂を取りすぎるのは、かえってニキビを悪化させてしまいます。特に、大人でのニキビ治療では、保湿不十分でニキビが悪化している方が多く見られます。また、化粧品やメイク、特にリキッドファンデーションやコンシーラーなどが、毛穴を詰まらせる直接的な原因にもなります。
ひとりひとり、肌の状態は違いますので、ご自分にあったスキンケアを見つけることが大切です。
ニキビに対する心構え:長期のコントロールと悪化時のテコ入れ
上記のようなニキビに悪影響を及ぼす生活習慣を改善したうえで、ニキビに対する治療をおこないます。
ニキビ治療には、二つのコンセプトがあります。
一つは、ニキビになりにくい状態を維持するための、長期コントロールを目的とした治療です。特に、思春期にできるニキビは、数年単位の、ホルモン環境が大きく変化する時期を対象とするため、根気強くコントロールしていく必要があります。
もう一つは、すでに炎症が起きているニキビ、すなわち毛包炎自体を抑える治療です。いわば、悪化した時のテコいれの治療とも言えます。炎症の程度も軽い時もあれば、強い炎症が起きるときもありますので、状態に応じて治療法を選択する必要があります。
漢方薬による長期コントロール
漢方薬は、長期コントロールを目的とした代表的な治療法です。体質に応じて、炎症を抑え、脂性肌を改善する漢方薬を長期に内服していただきます。
当院で使用している漢方薬は、天然に存在する薬効を持つ産物から、有効成分を精製することなく用いる「生薬(しょうやく)」です。抗生剤や抗炎症剤のように、人工的に合成した薬剤と比較して、長期間、安心して服用することができます。
外用治療(ベピオ・ディフェリン)
ベピオの有効成分は、抗菌作用と皮脂を抑え毛穴のつまりを解消する作用を持つ過酸化ペンゾイルという成分です。
ディフェリンは、同じく毛穴のつまりを解消する作用を持つアダパレンという成分です。
これらの薬剤はともに、自宅でおこなえる塗り薬の治療です。すでに起きているニキビを治療し、また、皮脂のつまりを取って新たなニキビを防ぐ目的での治療です。
以前から、日本のニキビ治療の薬剤は、他の先進国よりも非常に遅れをとっているという指摘がありました。内服、外用ともに抗生剤が主流だった頃は、お薬でニキビが治らないことが非常に多かったですし、また、長期使用で副作用も多く見られました。
ここ最近で、ようやく海外のニキビ治療と同様の薬剤が国内承認され、ニキビはしっかり治る疾患になってきました(ディフェリンは2008年から、ベピオは2015年から使用可能になりました)。海外では、以前からこれらの成分を用いた治療薬かニキビに標準的に使用されています。
これらの治療薬は、健康保険が適用されます。
レチノイン酸クリーム
レチノイン酸は皮膚のターンオーバーを促進し、皮脂腺からの分泌を抑制してニキビの発生をふせぎます。
ほかの塗り薬に肌質が合わなかったり、その他の治療で抑えられない時などに追加しておこなう治療です。
ビタミンA水光注射
ビタミンA水光注射は、レチノイン酸クリームと同様の成分を、水光注射(非常に細い複数の注射針で、正確に同じ深さへ、同じ量ずつ注射する医療機器)を用いて、皮膚内へ直接注射します。
非常に効果的な治療で、ほかの治療で抑えきれないニキビや、特に思春期の男の子のガンコなニキビの治療に、強力な「奥の手」です。
メディカルエステ治療
当院ではメディカルエステを併設し、専用の最新医療機器をとりそろえて、ニキビのエステケアもご提供しています。
エステでのケアは特殊なマシーンを用いるため、飲み薬や塗り薬のように、ホームケアはできませんが、ご自分の肌質に合ったエステケアに巡り会えれば、ニキビ治療のとても強力な味方になってくれます。
それぞれのエステケアの詳しい説明はこちらをご覧ください。
ニキビ跡へのケア
ニキビは進行して重度になると、将来的にニキビ跡が残ってしまうことがあります。
ニキビは、悪化すると次のように進行していきます。
面皰(めんぽう) :
皮脂腺から分泌された皮脂が毛穴から排出されず、毛穴にたまった状態。
俗に、「白ニキビ」と呼ばれます。また、毛穴が開いて内部が見えると「黒ニキビ」と言われることもありますが、これらは同じ段階のニキビです。
紅色丘疹(こうしょくきゅうしん) :
毛穴が炎症を起こして赤くなった状態。
俗に、「赤ニキビ」と呼ばれます。
膿疱 (のうほう):
感染が悪化して、毛穴の中に膿が溜まってしまった状態
俗に、「黄ニキビ」と呼ばれます。
膿疱 = 黄ニキビにまで悪化し、そのまま放置していると、そのうちニキビがつぶれて膿が出てきます(「自壊」と言います)。その部分はきずあと(瘢痕)として治り、場合によっては膿が溜まっていたスペースがへこんだ状態のままきずあとが張るため、「ニキビ跡」が残ってしまいます。
残ってしまったニキビ跡に対する治療も可能です。
しかし、ニキビ跡にならないように、未然に防ぐ予防が何より大切です。
当院では、膿疱の状態に対しては、組織のダメージを最小限にして膿を排出するため、レーザーでの処置をおこなっています。
世の中には、ニキビにいいと謳っている商品や、広告があふれています。
しかし、ここまでご説明してきたように、ニキビの状態や、原因、生活環境などは、ひとりひとり、千差万別です。ですから、ダイエット法と同じように、すべての人に「これで完璧」という治療法はありません。
しかも、自己流のセルフケアでは、肌の状態の変化などに対応できず、間違ったケアに陥りがちです。
ひとりひとりの個人差に対応し、状態の変化に合わせた治療を受けるには、医師の診察が不可欠です。そして、それこそが、自己流ではなく、「病院でニキビを治療する」意味であり、最大のメリットでもあります。
一人で思い悩むのはもうやめにして、私たちと一緒に、本気でニキビを攻略しましょう!